INTERVIEWINTERVIEW

専門家インタビュー vol.3

表情筋でキレイは上がる? 表情筋でキレイは上がる?

私たちが日ごろ、無意識のうちに動かしている表情筋。それには、どんなものがあり、美しさとどう関わっているのでしょうか。今回は、スポーツ科学や運動生理学を専門とする千葉大学大学院国際学術研究院 准教授の小泉先生に、表情筋という筋肉のこと、そして美容にまつわるお話を伺いました。

小泉 佳右 写真小泉 佳右 写真

PROFILE

小泉 佳右Keisuke Koizumi

千葉大学大学院国際学術研究院 准教授。スポーツ科学、運動生理学、健康科学を専門分野とし、主に「ヒト生活リズムの確立と身体活動との関係」「Active recoveryの生理学的背景」を研究。

主な論文

「1日60分以上の身体活動をする幼児の時間ごとの活動特性と体温概日リズム. 千葉大学国際教養学研究 4: 147-155, 2020.」「幼児期における生活リズムを確立するための、身体活動の有効性―唾液マーカーによる概日リズム評価を用いて―. 第32 回若手研究者のための健康科学研究助成成果報告書 70-74, 2017.」「Active recovery effects on local oxygenation level during intensive cycling bouts. Journal of Sports Sciences 29: 919-926, 2011.」

よく聞く表情筋って、どんな筋肉?よく聞く表情筋って、どんな筋肉?

私たちのさまざまな表情をつくる表情筋には、どのくらいの種類があるのでしょう?

頭部に位置していて表情をつくるのに関わる筋肉を総称して表情筋と呼ぶわけですが、およそ20~30種類あるとされています。
例えば目や眉の表情に主に関わるのは眼輪筋や皺眉(しゅうび)筋、前頭筋、口角を上げる表情には大頬骨筋、小頬骨筋、頬筋、笑筋が主に関わっているという具合。ただ、他の部位もそうですが、筋肉はひとつだけで運動することはほとんどないので、周囲の筋肉と協働して豊かな表情をつくり出しているといえますね。

一般に筋肉はよく動かしている部分は鍛えられてよく動き、あまり使われていない筋肉は衰えて動かしにくいと思いますが、表情筋も同様でしょうか。

腕や脚にある筋肉も表情筋も「骨格筋」と呼ばれる筋肉で、細胞レベルでのつくりはほとんど変わりません。ですので、使うことにより鍛えられ、使わなければ萎縮していくものと考えられます。無表情で筋肉を使う機会がなければ、筋肉が細くなり動かしにくくなると予想されます。

マスク生活で、表情筋は衰えている?マスク生活で、表情筋は衰えている?

すでに1年以上も続くマスク生活。私たちの表情筋にも変化はあるのでしょうか。

表情筋は「骨格筋」のひとつと先に触れましたが、骨格筋については参考になるデータがあります。重力に対して姿勢などを維持する骨格筋のひとつ「抗重力筋」は、90日のベッドレスト(ある一定期間、ヒトをベッドに臥床させる)生活によって、20%減少するという報告があるんですね。このように、筋肉は使わなければ使わなかった部分が衰えていくわけですので、マスク生活で表情を表す機会が減れば、そうした表情筋が衰えていくことになります。

先生は、学生さん達に、マスク生活と表情に関するアンケート調査もなさったとお聞きしましたが。

マスク生活と表情について説明してくださる小泉先生マスク生活と表情について説明してくださる小泉先生マスク生活と表情について説明してくださる小泉先生

これは私の専門である身体活動量とコロナ禍による生活の変化を研究するところから、身体活動の質が気になって行ったものですね。2021年の1月に、大学生の男女70人にアンケート調査をしたところ、「マスクをする生活が続いていますが、自分自身の表情が乏しくなったと感じますか?」という質問に対して52.9%が「そう思う」と回答しました。また「マスクをしていることで、自分の表情をごまかすことはありますか?」という質問には60.0%が「よくある」「ときどきある」と回答しています。マスク生活は良い意味でも悪い意味でも表情を隠すことができますが、表情をつくらない=表情筋が衰える傾向にあるといえそうです。実際に、アンケートの自由記述でも「あまり顔の筋肉を動かさなくなったので、目、頬の筋肉が減った」という回答も寄せられました。

年齢とともに深くなるほうれい線、目尻のシワにも表情筋が関係している?年齢とともに深くなるほうれい線、目尻のシワにも表情筋が関係している?

続いて美容と表情筋について教えていただきたいのですが、いわゆる年齢サインにも表情筋は関わっているのでしょうか。

先に、表情筋は骨格筋のひとつと説明しました。それらの筋肉は通常、両端が骨につながっているのですが、表情筋のいくつかは皮膚や唇などの軟部組織に付着しているんですね。ですので、筋肉が衰えて細くなり、収縮力が弱まると、付着している部分がたるんでくることになります。
例えば大頬骨筋や小頬骨筋などが衰えると頬のたるみに、さらに筋肉量が減少するとハリがなくなり、ほうれい線が深くなると考えられます。目元のシワも眼輪筋など目元の筋肉の衰えやハリの減少が原因の一つになると思われます。

表情筋の年齢サインについて詳しく解説くださる小泉先生表情筋の年齢サインについて詳しく解説くださる小泉先生表情筋の年齢サインについて詳しく解説くださる小泉先生

なるほど。表情筋の場合は、筋肉の衰えが目に見えて表れてくるわけですね。では、気になる部分だけを鍛えれば良いのでしょうか。

表情筋のイラスト

気になる部分を鍛えることで部分的な効果はみられると思いますが、筋肉はひとつで動いているわけではないのでバランスよく鍛えることも大切です。顔全体のハリを考えると、細かい筋肉も鍛えていくのが良いと思います。

効果的な表情筋の鍛え方は?効果的な表情筋の鍛え方は?

表情筋を鍛えることで、何が変わってくるのでしょう?

表情筋を鍛えると、筋肉が太くなり、収縮力が高まります。鍛えることで筋肉の可動域が広がるんですね。そうすると動かしやすくなって表情が大きく豊かになるといえます。口元だけで笑っていたのが、顔全体で笑顔がつくれるようになるということですね。
また、収縮や弛緩を繰り返すことで筋内に貯留する血液量が増えます。このことにより血流が良くなり、血行もよくなると考えられます。

効果的に鍛える方法はありますか。

まずは意識して表情筋を使っていくことですね。それから疲れを感じるくらいまで動かすトレーニングを。これは表情筋の体操でも良いですし、筋肉を繰り返し収縮させるEMS(電気刺激を与えて筋肉を動かす機器)を使うのも良いでしょう。

また、表情筋のように、普段あまり積極的に鍛えていない筋肉に負荷をかける際は、運動前のウォームアップも大切になってきます。顔が冷えているなら、温めてから表情筋のトレーニングするのが好ましいですね。
筋力は4週間で変わるといわれます。普段あまり使っていない筋肉であれば、より短期間で効果が表れます。最も大切なのは、続けること。骨格筋と同じように、表情筋も何歳からでも鍛えられると考えられますので、続けて鍛えていくことを心がけてみてください。