表情筋研究所

YA-MAN ヤーマン

research研究

2024.04.05

緑の光

日差しがまぶしい時期が近づいてきました。太陽光というと、肌を老化させるもの、シミのもと。それをどう防ぐか、逆に肌にとってよい光に転換できないか、今年もビューティー界ではさまざまな試みがされています。そんな「光」、ヤーマンの『表情筋研究所』でもなにか調査をしているらしいということで、緑色に光るラボへ。

未知の領域・光の世界

美容技術の世界では、光ってどのような存在なんでしょうか。

「光は、美容技術を構成する4大エネルギー「電気」「熱」「超音波」「光」のひとつです。」

確かにサロンでもさまざまな色のLEDが搭載された装置を見ます。

「光を使った美容技術にも種類があり、たとえば、LEDのようなやさしい光源を使った「フォトケア」、ムダ毛ケアにも使われる強い光「IPL」、熱エネルギーを発する「レーザー」などがあります。共通するのは、それぞれに波長があり、波長ごとに得られる効果、作用が異なるということです。」

「レーザー」はかなり刺激的、「IPL」はじんわり温かいですが、LEDは痛みも熱さもない、本当に効いているのかどうかわからず、怪し気だと正直思っていました。

「光のメカニズムは研究分野でも解明されていない部分が多いのですが、光に反応するたんぱく質や酵素が皮膚には存在しており、様々な化学反応を経て肌の代謝や機能を高めてくれるということが分かっています。医療分野においても研究がまだ期待される領域で、光の可能性はまだ秘められているんです。」

確かに、最近ではLEDで野菜を育てたりもしています。

「特に光エネルギーを代表する「可視光線」は生体侵襲性が小さく、医療分野や美容分野でも生体に対する可視光線の影響についてさまざまな研究がされています。」

緑色って?

そんな中、この「緑色の光」の空間ではなにをされているのでしょうか。

「厳密にいえばこちらは、「緑」の中でも「青緑色」の波長域の光なのですが、実はこの「青緑の光」で面白い発見がありました。」

「緑」ってあまり聞いたことないですね。赤とかオレンジはよく見かけますが。

「人間の目に見える可視光線の中は、このように青~赤まで、光の色に幅があります。」

「美容の世界では、特に赤~黄色については肌のハリを高める効果が、青色は抗菌作用がありニキビを改善する効果があるという報告があります。ただ一般的に490-530nmの範囲であるいわゆる「緑」の領域についての研究報告は、あまり見かけません。」

なるほど。それでその発見というのはなんだったのでしょうか。

「「メラニン」の抑制です。」

メラニン vs. 緑色の光

「メラニン」というとあの「シミ」のもとですか?

「はい。「メラニン」はみなさまご存じの通り、「シミ」など美容上の問題を引き起こすことで知られています。」

「「メラニン」はメラノサイトと呼ばれる細胞の中のメラノソームで合成、産生されていきます。紫外線から肌を守る仕組みとして、メラノソームが周囲の細胞に働きかけてメラニンキャップを形成することは、私たちの身体機能として必要なものではありますが、こうした一連の流れの中で、メラニンの産生が異常に亢進したり、産生したメラニンの排出が滞ったりすることが、シミや肝斑などといった美容上の問題を引き起こすこととしても知られています。」

緑の光がメラニンを抑制してくれるのですか。それは発見でしたね。 どんな実験をしたのでしょうか。

「新たなメラニン産生抑制法として、緑色の光がメラニン産生に及ぼす影響を、B16メラノーマ細胞を用いて検討しました。ここで用いるB16メラノーマ細胞とは、マウス黒色腫細胞株とも呼ばれ、メラノサイトをターゲットとする美白評価試験によく用いられる細胞のことです。」

「行ったのは2つの実験です。光には波長があり、波長ごとに得られる効果、作用が異なるため、一つ目は、効果的な「波長」を探すこと、二つ目は効果的な「出力」を探すことです。」

「まず、B16 メラノーマに「505nm」と「525nm」の2種類の波長の緑色LED光を照射しました。」

確かに同じ緑でも、青味がかったもの青緑色と、黄味がかった黄緑色、見た目でも違いますね。

「結果、こちらのグラフのように、どちらもメラニン産生量は減少しましたが、「505nm」 の青緑色LED 光の方がより減少することが分かりました。」

緑色はメラニン産生を抑制するけれど、同じ緑色でも505nmの青緑色の波長がよりよかったと。

「はい。そして次に、ではエネルギーの大きさによる違いはあるのか、を調べました。」

「右にいくほど強いエネルギーをかけているのを示したのがこのグラフです」

「同じ波長でも、出力の違いでメラニンへの影響が違うことがかります。光もほかのエネルギーと同様、「波長」と「エネルギーの大きさ」の組み合わせで効果が変わってきます。そこに奥深さがありますね。」

実地検証!

「実際の人の肌でも実験してみました。こちらは緑色LEDを照射した場合としなかった場合で、肌の明るさを8週間比較してみたものです。青色のグラフが緑色LEDを照射したものです。肌の明るさに変化がおきているのが分かります。」

「画像でも確認してみてください。いかがでしょうか?」

確かに、数値だけでなく、顔全体印象として、くすみが晴れ肌のトーンが改善していますね!

「光」の探索、いかがだったでしょうか。
ほかのエネルギーと違って熱くも痛くもない、体感がないからこそ分かりづらいエネルギーですが、刺激がない、というのは敏感な肌には大きな希望です。
そして波長とパワーのかけあわせ、少しの違いが効果に違いをもたらす繊細な技術でもあるんですね。

まだまだ実験は続きます。

出典:
月刊誌「診療と新薬(2023 vol.60 No.5)」(医事出版社)掲載論文
「B16 メラノーマにおけるメラニン産生に及ぼす緑色 LED 光の影響」

表情筋研究所日誌一覧に戻る